「エナリス脱炭素サミット2025」リポート
地域経済活性化につながる環境価値ビジネス最前線
~脱炭素社会の実現に向けた新たな挑戦~
エネルギーレジリエンス向上へ
アグリゲーションの技術と知見を生かす
(左)エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長 小林輝夫
(右)エナリス 社長 都築実宏
提供:エナリス

「エナリス脱炭素サミット2025」リポート
地域経済活性化につながる環境価値ビジネス最前線
~脱炭素社会の実現に向けた新たな挑戦~
(左)エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長 小林輝夫
(右)エナリス 社長 都築実宏
KDDIとJパワーが出資し、法人向けにエネルギー事業を展開するエナリス(東京・千代田)は10月、「エナリス脱炭素サミット2025」を開催、産官学の有識者が講演した。再生可能エネルギーなどの導入による温暖化ガスの削減効果「環境価値」を生かし、どのように地域経済の活性化につなげるのか――。脱炭素社会実現に向けた現状と課題、挑戦の最前線を紹介する。
オープニング
環境価値を生かし地域活性化
都築実宏
エナリス 社長
今回で2度目となる「エナリス脱炭素サミット」は、地域経済活性化と環境価値ビジネスに焦点を当てた。自然エネルギーや再エネなど地域資源を活用し、エネルギーレジリエンス(強じん性)につなげるとともに、自家消費された再エネなどに付随する環境価値を生かし、地域活性化につなげることも重要と考えるからだ。
都築実宏
エナリス 社長
当社の試算では、直近1年間で約270万トン分の二酸化炭素(CO2)の環境価値が埋もれている。金額換算すると約175億円規模に上る。制度や技術的な制約で評価されない環境価値を顕在化する上で重要になるのが「アグリゲーション」、つまり地域に点在する需要家の元に点在するエネルギーリソースを束ね、電源として最大限活用したり、電力需給バランスをコントロールしたりする機能だ。埋もれた環境価値を顕在化させ地域経済の活性化につなげることも、アグリゲーターの重要な役割だ。当社は2016年以降、この分野で技術や知見を培ってきた。この取り組みを通して、脱炭素社会の実現に向けて貢献していきたい。
脱炭素・アグリゲーション・経済循環の図
環境価値の配分
脱炭素社会に向けた分散型調整力の活用と行動変容を促す仕掛け
間接的便益も絡め脱炭素促す
磐田朋子氏
芝浦工業大学 副学長
脱炭素のカギは、「電化」と「カーボンニュートラル電源」をいかに同時投入していくかだ。再エネは出力変動が伴い、調整が必要になる。それがコストに跳ね返るとの予測もある。電気料金を上げずに、脱炭素を進めるには「系統用蓄電池」や、電気自動車のバッテリーなど民生に散らばる機器も広く活用し、出力変動を吸収する分散型調整力が欠かせない。脱炭素に協力する市民を増やすことも重要だ。
磐田朋子氏
芝浦工業大学 副学長
だが、脱炭素の重要性は理解しても、行動に移せない市民もいる。そこで行動変容を促す仕掛けがいる。ドイツのサッカー場では太陽光発電を導入するために市民から出資を募り、協力してくれた人には試合のチケットを優先的に入手できるなどの恩恵を与えている。こうした間接的な経済便益と脱炭素を結びつけていく手法も有効だろう。
地域脱炭素と地方創生
地域防災力や地方創生に貢献
冨安健一郎氏
環境省 地域政策課 課長
地域の特性に応じた脱炭素の取り組みは、地場産業振興や防災力の強化など地域課題の解決に貢献し、地方創生につながる。環境省は「脱炭素先行地域」の選定や「地域脱炭素推進交付金」などを通じ、地方公共団体の取り組みを支援している。
冨安健一郎氏
環境省 地域政策課 課長
脱炭素先行地域とは、地域脱炭素ロードマップに基づき2025年度までに少なくとも100カ所を選定し、2030年度までの実現を目指すもの。再エネ産業団地を創出し、データセンターを誘致する北海道石狩市や、津波被災跡地で営農型太陽光発電を拡大しブドウを栽培、ワイン加工につなげる岩手県陸前高田市など、これまで90の地域が選ばれている。石川県・珠洲市役所が導入した太陽光発電や蓄電池が能登半島地震の際に威力を発揮したことも、脱炭素化がレジリエンス強化になることを裏付ける。各種財政支援策も講じ、今後も自治体における地域脱炭素の取り組みを後押ししていく。
石川県・珠洲市役所が導入した太陽光発電や蓄電池(写真提供:珠洲市)
住宅PPA由来の環境価値配分とリアルタイム取引の展望
宮古島で「脱炭素グリッド」構築
比嘉直人氏
ネクステムズ 社長
当社は宮古島を中心に沖縄で、戸建てや集合住宅などに太陽光蓄電池やエコ給湯機などを無料で設置し、再エネサービスプロバイダー事業などを手掛けている。宮古島での機器設置件数は1132件に上る。「脱炭素のために」と伝えても分かりにくいため、お客さまの経済的メリットを訴えて増やしてきた。
比嘉直人氏
ネクステムズ 社長
国の脱炭素先行地域になった宮古島の下地地域と狩俣地域では、太陽光発電などを最大限導入し、「脱炭素グリッド」を構築。電力需給を制御しながら再エネの地産地消を実現。日本最南端の有人島、波照間島でも現在、再エネ100%を目指した実証事業などに取り組んでいる。再エネ分散型電源が高率普及するエリア内で、住宅PPA(電力購入契約)由来の環境価値を配分し、住宅側のサービス利用料金低減に寄与するバリューチェーンの構築を目指している。
電力需給の最適化
脱炭素を支える蓄電池事業
経済性と安全性を両立し蓄電池普及を促進
松井宏樹氏
大阪ガス 電力事業開発部長
近年、大阪ガスは電力事業も拡大している。様々なパートナー企業と共同で電源開発を進めており、現在の実績はバイオマス発電が全国8カ所(発電容量約45万キロワット)、太陽光は全国377カ所(同約72万キロワット)となっている。発電事業者などからの再エネ電力の調達も行っており、販売時には付加価値を還元している。再エネ普及貢献量は現在370万キロワットで、2030年度の目標500万キロワット達成に向けてさらに拡大していく。
松井宏樹氏
大阪ガス 電力事業開発部長
一方、当社は系統用や再エネ併設型の蓄電池事業にも取り組んでいる。これらは、系統電力の需給バランス維持や再エネの有効利用に貢献する。ただし、蓄電池には収益の不確実性や火災のリスクといった課題がある。そこで当社は多様なパートナーとの協業や安全対策の推進、市況変動に柔軟に対処できる専門人材の積極採用を進めることで、経済性と安全性の両立を実現し、蓄電池の普及に努めている。
蓄電池・DRに関連する最新政策動向について
需給バランス調整する政策進める
山田努氏
資源エネルギー庁 新エネルギーシステム課 課長
電力の需給バランスを調整する蓄電池やDR(デマンド・レスポンス)に関する政策の重要ポイントを3つ説明する。1つ目は送配電網につないで電力需給を調整する系統用蓄電池の接続申し込みが急増し過熱感があることだ。火力・揚水発電による調整、電力需要をシフトするDRとのバランスを分析していく必要がある。
山田努氏
資源エネルギー庁 新エネルギーシステム課 課長
2つ目は2026年度からの排出量取引制度(GX-ETS)本格稼働に伴い、再エネで生み出す環境価値を収益化する機会が増えることだ。蓄電池により充電した余剰再エネを自家消費に活用し向上する環境価値を収益とみなせる。3つ目は電力の調整力を売買する需給調整市場で、家庭用蓄電池など(低圧リソース)による調整力も束ねて売買できるようになることだ。複数リソースを束ねて制御し電力取引を行うアグリゲーターの存在感も増す。
GX・エネルギー政策におけるDRの必要性
デマンドフレキシビリティは社会実装できるのか:次の10年への論点
制御方法、最適組み合わせで
岩船由美子氏
東京大学 生産技術研究所 教授
DRには時間帯別などの料金設定で間接的に需要を誘導する「料金型」と、アグリゲーター側が遠隔制御で直接需要を制御する「インセンティブ型」がある。両方式をうまく組み合わせていくことが重要だ。DR自体の拡大の壁は、ヒートポンプ式給湯機「エコキュート」なども含めて、制御機能を有する機器がまだ少ないことだ。
岩船由美子氏
東京大学 生産技術研究所 教授
料金型の壁は、市場価格に連動する料金を用意している電力小売りが少ないこと。インセンティブ型の壁は、機器の少なさとともに需給調整市場の制度変更で収益化が難しいこと。まず蓄電池も含め制御する機器を、導入コストを下げて増やす必要がある。送配電網の利用料である託送料金で、太陽光で余剰電力がある時間帯にはゼロ円にする、といった時間帯別の設定などが必要だ。需給調整市場制度も安定させなければならない。
実証例
ハイブリッド給湯機“ECO ONE”のDRの活用と脱炭素への展望
需給調整可能な給湯機提供
所寿洋氏
リンナイ イノベーションセンター
国内商品設計室 次長
当社はヒートポンプ給湯機にガス熱源機がついたハイブリッド給湯機「ECO ONE(エコワン)」を提供している。寒冷地、少人数世帯でも省エネ性が優れていて、電力需給を調整できる機能「DR」にも対応するのが特徴だ。導入家庭の一日の生活パターンを学習し、最適なお湯の沸き上げの温度・量・タイミングを判断しており、余剰電力が発生する昼間に沸き上げを前倒しするモードも備えている。
所寿洋氏
リンナイ イノベーションセンター 国内商品設計室 次長
「DR」については、電力需要を増やす「上げDR」にも対応でき、電力需要を減らす「下げDR」に対応しても湯切れを起こさない。そのため、電力ひっ迫時間帯でも調整できる。業界としては2029年ごろに、今回決められた「DRready(遠隔制御によりDRに対応できる状態)」要件を満たした機器を発売する予定だが、前倒しできるように規格類を整備したい。
地域の交通課題解決に貢献する新たなインフラ
再エネの地産地消めざす
大角真一郎氏
鳥取市 スマートエネルギータウン推進室 室長
鳥取市は脱炭素先行地域に指定されている。先行地域である佐治町地区では、スーパーやガソリンスタンドが閉店するなど地域の生活基盤が揺らぎ、公共交通の面でも課題がある中、地域デマンド交通の運行を行っている。地区を流れる川に小水力発電設備をつくる計画もあり、その電気を活用して電気自動車(EV)を導入したデマンド交通への充電、森林整備、スマート農業の実現を目指す。また「ReCIDA(リシーダ)コンソーシアム」の実証フィールドとして、検討研究を行っている。
大角真一郎氏
鳥取市 スマートエネルギータウン推進室 室長
「モビリティ蓄電インフラ」概要
過疎地で持続可能な地域交通
瀧口信一郎氏
日本総合研究所 創発戦略センター
シニアスペシャリスト
ReCIDAコンソーシアムは過疎地で水力、バイオマス、太陽光などの再エネ発電に投資し、持続可能な地域交通をつくる取り組みだ。発電した電力をためるため、着脱式のバッテリーステーションや定置用蓄電池などからなる「モビリティ蓄電インフラ」をつくり、地域交流の結節点にする。地域交通のEVの電池は再エネ発電を行う地域電力会社に電力を供給する。電力会社は需給調整事業を行って収益を上げ、収益を地域交通に対価として返していくというモデルを考えている。
瀧口信一郎氏
日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト
エナリスの挑戦
コネクト&アグリゲート
エナリスの技術を活用した脱炭素社会の実現に向けた新たな挑戦
つながり、束ね、価値創出&収益化へ
小林輝夫
エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長
電力業界に需給バランスを調整する存在「アグリゲーター」が入ることで、電気の流れが双方向に変わってきている。同時に、エネルギーサプライチェーンに様々なプレーヤーが参入し、新たなビジネスが生まれている。
それに伴い、電気に新しい価値が生まれてくる。再エネを最大限活用できるように調整する電力の価値、特に2026年度からは需給調整市場での取引が開始されることになる家庭用蓄電池やEVなどの分散型電源、同年度から本格稼働予定の排出量取引制度(GX-ETS)により、さらに需要が高まる環境価値などだ。
小林輝夫
エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長
エナリスは、こうした価値を生かせるよう、技術への安心感や経験に裏打ちされた迅速で柔軟なサービスを提供し、多様なプレーヤーに伴走支援していく。様々なプレーヤーとつながり(コネクト)、ソリューションや技術を束ね(アグリゲート)、賢く制御する。価値創出やマネタイズを進め、脱炭素社会の実現につながるビジネスを拡大していきたい。
セミナー会場では、エナリスの脱炭素ソリューションのデモ展示も行われた。写真は、人が歩く際に床を踏むエネルギーを電気に変換する「発電床」
※著作・制作=日本経済新聞社。2025年11月28日から12月26日に掲載した日経電子版広告特集を、株式会社エナリスが編集・加工しました。掲載の記事・写真・イラストなど、全てのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。