EV蓄電池を地域社会の電源として活用、カーシェア+蓄電池シェアにチャレンジ
2022年09月28日“EV”の蓄電池を有効活用
世界中の自動車メーカーがガソリン車からEV(電気自動車)にシフトする計画を発表しています。エンジンの代わりに蓄電池を搭載して走るEVは、走行時のCO2排出量が極めて低いとされ、環境にやさしい自動車として注目されています。 ところで、移動手段として存在する“車”ですが、実は動いている時間より待機している時間のほうが圧倒的に長いことをご存じでしょうか?驚くのは、その割合。実際に道路上を走行している時間は5%に満たないのだそうです[※]。
走行していない時間帯にEVの蓄電池をちょっと拝借できたらいいよね・・・いうことで、エナリスでは、EVカーシェア事業を展開するREXEV(レクシヴ)さま(以下敬称略)と共同で2020年度から実証事業に取り組み、2022年度からは、電力需給ひっ迫時の調整力としてEV蓄電池を活用するという実用化に成功しました
今回は、実証を進めてきたエナリスみらい研究所のメンバーに話を聞きました。
エナリスとREXEVの挑戦
エナリスが目指す「分散するエネルギー源を有効活用し尽くし、再エネ主力電源化へ」
エナリスは早くから、自家発や蓄電池など社会に分散して存在するエネルギー源(DER)に注目し、このDERを制御する実証を重ねてきました。2019年には多数のDERを一括で制御するシステム『DERMS』を開発。こうした中、DERの1つであるEVにも注目し、現在では神奈川県小田原市でREXEVと商用利用を展開しています。(文末のコラム参照)。
エナリスとREXEVの取り組みの最大の特長は、実際にカーシェアリングサービスで使われているEVを対象としてきたこと。多くのEV実証では、実証用の車を用意しますが、エナリスでは、カーシェアリングという実ビジネスの中で実証を重ねてきました。カーシェアとして使用されていない時間帯を最大限に利用する方法をエナリスのVPPシステムとREXEVのeMMP(eモビリティマネジメントプラットフォーム)を連携することで実現しています。
eMMPは予約状況や過去の傾向から予約が入る可能性を期待値という形でデータ化します。エナリスVPPシステムは、当該データをもとにEVを蓄電池として活用する方が良いのか、カーシェアの予約待ちとするかを判断します。
実証では予期せぬ対応に苦労
乗りたいときに乗れないと意味がないのが車。みらい研究所の藤原健は「動くからこその苦労があった」と振り返ります。カーシェアリングを利用する実際のお客さまの行動は実証用のシナリオに落としづらく、お客さまの思わぬ行動に予期せぬ対応を迫られたそうです。
みらい研究所の小林輝夫は、「エナリスが何年もかけて積み上げてきた知見は非常に重要で、技術的な先行者としてメリットがあると自負しています」と話します。
今後の展開
さまざまなユースケースにチャレンジし、社会の利益へ
エナリスはEVを上手く制御することで、EVに対して本来の役割である「走る」「止まる」「曲がる」に加えて「電力を調整する」という新たな役割を与えることができると考えています。
みらい研究所の東海泰久は、「EVを新しいフィールドにどんどん活用していきたい」と次の展開を見据えています。先んじて新たな活用を示すことに当社の存在意義があると話します。 自社技術の向上とともにEVの新しい活用に挑戦しながら、エナリスはパートナー企業とともに再エネの普及や脱炭素社会の実現に貢献していきます。
コラム
ある夏の暑い日、夕方の太陽光発電の出力減少を見越して、電力の送配電網を管理する一般送配電事業者から、エナリスに、「〇kW分の電源を3時間後に供出願います」と指令が来ました。エナリスは、連携しているREXEVのシステムを経由して、小田原ガス本社に設置されたEV充放電器の「放電スイッチ」をオンに。すると、放電機器とつながれたEVから小田原ガス本社ビルに電気が3時間にわたって送られます。これにより、小田原ガス本社ビルは、系統から買い取る電力を抑制でき、節電となるわけです。小田原ガス本社ビルを含めた6拠点で、エナリスとREXEVは同様の取り組みをしています。
右側のEVは充放電器につながれている。予備率が下がった際、EVの電気は左奥に見える小田原ガスの建物に活用される
写真はすべて©ENERES
取材・文責 エナリス広報部