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国内初、分散型電源のリアルタイム制御に成功
~5GとAWS Wavelengthを活用、再エネ拡大・脱炭素に貢献~

2022年02月17日

株式会社エナリス
KDDI株式会社

エナリスとKDDIは2021年10月から2021年12月の間、5GとMEC(注1)の商用サービスであるAWS Wavelengthを活用した仮想発電所「VPP(バーチャルパワープラント)」(注2)の実証実験(以下 本実証実験)を実施し、日本で初めて(注3)MECを用いた分散型電源のリアルタイム制御(注4)に成功しました。各分散型電源に接続する専用端末の性能をMECに持たせることにより、端末の低コスト化と制御精度向上の両立を実現します。

再生可能エネルギーの導入拡大には発電量と電力需要量の変動に応じた迅速なバランスの調整が必要となります。バランス調整を行う仕組みとして期待されるVPPには、効率的かつ迅速に家庭用蓄電池などの分散型電源を制御し、必要とされる電力量を供出する技術が求められています。

本実証実験では低遅延の特長を持つ5GとKDDIの5Gネットワーク内に配置したAWS Wavelengthを掛け合わせることにより、分散型電源の制御周期を従来の1分から1秒に短縮しました。さらに、同一基地局エリア内にある分散型電源間で誤差を補い合い、制御精度を高めることにも成功しました。これにより、今後普及が見込まれる家庭用蓄電池をはじめとするさまざまな分散型電源をVPPに取り込み、より大容量に、より素早く柔軟に電力の安定供給に貢献できることを確認しました。

両社は、5GとAWS WavelengthのVPPへの活用を通じて再生可能エネルギーの大量導入における課題である発電量の不安定性の解決に取り組み、日本のカーボンニュートラルの実現に貢献していきます。

実証構成図
<従来構成(左図)と本実証実験の構成(右図)>  

■ 本実証実験の背景

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの大量導入による主力電源化が目指されています。安定した電気の供給には発電量と電力需要量とのバランスを常に保つ必要がありますが、再生可能エネルギーは発電量が季節や天候に左右されやすいため、家庭用蓄電池をはじめとした分散型電源の制御による需給の調整が重要になります。VPPは需給の調整を行う役割として期待されており、今後の利用拡大に向けて、より多くの分散型電源を低コストで迅速かつ高精度に制御できる技術が求められています。

■ 本実証実験の概要

AWS Wavelengthは、KDDIの5Gネットワーク内にAWSのシステムを配置しデータ処理することで、アプリケーションの低遅延処理を実現するものです。

本実証実験は、今後普及が見込まれる家庭用蓄電池やバッテリー式電気自動車を想定し、エナリスのVPP技術基盤とKDDIの5G×AWS Wavelengthを活用し、より高度で高速な分散型電源制御の実現性を実証しました。

これまで各分散型電源リソースに設置していた専用端末とクラウド型の分散型電源マネジメントシステム(DERMS)で担ってきた制御処理などをAWS Wavelengthに移行しました。

実証概要表

5G×AWS Wavelengthを利用したVPPにおいて、今後必要とされる分散型電源の制御のリアルタイム化、高度化を実現し、分散型電源による安定的な電力供給が図れることが実証できました。

また、各分散型電源リソースに接続した専用端末をAWS Wavelengthに移行するため、従来、分散型電源側に設置していた高性能なゲートウェイ装置が不要となり、電力ユーザー側にかかるコストの低減が可能となります。

エナリスとKDDIは、エネルギー分野におけるDX (デジタル・トランスフォーメーション) 推進と多様な分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスの拡大を通じ、日本社会のカーボンニュートラル実現に貢献します。

(参考)

【エナリスの持つVPP技術基盤】

エナリスでは、2016年度から経済産業省「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業」にコンソーシアム幹事社として継続して参画し、電力ユーザーが所有する多様な設備を制御・アグリゲートする技術を確立してきました。2018年には、分散型エネルギーリソースの制御プラットフォームとなる「DERMS」を独自に開発。その基盤を元に、今年度は、経済産業省「分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業」に採択され、今後の普及拡大が見込まれている家庭用蓄電池をはじめとする分散型エネルギーリソースを有効に活用するための仕組み構築にチャレンジしています。

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【AWS Wavelength】

Amazon Web Services, Inc.とKDDIで提供するエッジコンピューティングサービス。auのネットワークエッジにて、AWSのコンピューティングサービスとストレージサービスを提供しています。

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【KDDIの取り組み】

KDDIは、これからも事業を通じてさまざまな社会課題の解決に取り組み続けるという決意をこめ、2030年を見据えたKDDIのSDGs「KDDI Sustainable Action~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定しました。社会課題をリスクとして捉えるだけでなく、KDDIならではの強みを生かしたチャンスと捉え、5GやIoTなどを活用した地方創生や、途上国における低廉で高品質な通信サービスの提供など、事業として利益をあげながら、さまざまな社会課題の解決を図ります。

  • (注1)Multi-Access Edge Computingの略。サーバーを端末の近くに分散配置し、お客さまの近くでデータ処理を行うことで低遅延な通信を提供する技術。
  • (注2)電力ユーザーの敷地内にある蓄電池やコジェネレーションシステムなどの分散電源をまとめて制御し、そこで生まれた電力を束ねてあたかも一つの発電所のように活用する仕組みのこと。
  • (注3)2022年2月17日現在、エナリス調べ。
  • (注4)低遅延性に加えて、MEC・端末間を1秒周期で高速制御を行い、かつ制御結果を次の制御に生かして補正すること。