HCAIでPV発電量予測の異常検知を高度化、エナリス・KAG共同実証
エネルギー分野でAIと人がフィードバックし合うHCAIの社会実装を目指す
2025年06月03日
株式会社エナリス
KDDIアジャイル開発センター株式会社
株式会社エナリス(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:都築実宏、以下エナリス)とKDDIアジャイル開発センター株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長/CEO:木暮 圭一、以下KAG)は2025年5月中旬より、太陽光発電量予測の異常検知システムにHCAI(人が中心のAI/ Human-Centered AI)を組み込む共同実証を開始しました。
AIによって導かれた結果を、別のAIが分析・評価し、それをさらに人間が評価して改善指示するサイクルを回すことによって、AIの精度を継続的に向上させ、安心して活用できるAIシステムの実現を目指します。
本実証では、KAGが生成AI・HCAIの知識・技術を提供し、エナリスが生成AI・HCAIの開発を実施、システム構築は両社共同で行います。

“生成AI”が、急激にビジネスに浸透する中、エナリスでも、需給管理業務や発電量予測などにAIを積極的に取り入れてきました。その一つが、太陽光発電量予測値の“異常値”や“実績値との乖離”を検出し、生成AIで報告・分析・提案を行う予測AI「異常検知システム」です。
しかし、生成AIには、もっともらしい誤情報を生成する「ハルシネーション」や「なぜその結論に至ったのか理由が分かりづらく判断の責任所在が曖昧になる」といった課題があり、社会インフラを支えるエネルギー分野において生成AIを活用するためには、これらの課題を解決する必要があります。
こうした課題の解決を目指し、エナリスとKAGは共同で、AIの出力結果が「どのくらい正確で信頼できるか」を客観的に評価する工程に、さらに別の生成AIを組み込み、そこから出された評価結果を最終的に人間が評価・判断して各AIにフィードバックするシステムの構築に挑戦します。
KAGは、KDDIグループにおいてソフトウェア開発・提供を担っており、“アジャイル開発”[1]に徹底的にこだわり続けてきたDX専業の組織です。生成AIやHCAIの領域において、日本屈指の知見を保有しています。また、LLMOps[2]やAIエージェントのプロダクト適用など、最新のトレンド技術を生かした価値提供を得意としています。
エナリスは電力需給管理業務を創業事業とし、早くから予測AIを活用した発電量予測や需要予測の高度化に取り組み、発電事業者さまを支援してきました。
今回のフィールドは太陽光発電量予測ですが、今後、他のフィールドにもHCAIを広げていくことを目指しています。
エナリスとKAGは、本実証を通して、人とAIが共存する、豊かな未来社会の実現に貢献します。
■ 実証の概要
目的 | 太陽光発電の発電量予測における異常検知業務へのHCAIシステムの有効性検証 |
期間 | 2025年5月中旬~年内 |
役割 | ー エナリスー エネルギーマネジメントに関する知見提供、太陽光発電異常検知ロジックの提供、分析生成AI システムの開発・実装、実証フィールドの提供・評価 ー KAGー HCAIに関する知見・技術提供、評価生成AIシステムの開発・実装、AIの評価・可視化技術の開発、AIエージェント技術の適用検討、システム全体の連携・最適化 |
期待される効果 | ・予測AIの予測精度向上 ・異常値の原因究明の迅速化・効率化 ・生成AIの信頼性向上による活用促進 ・発電量予測業務におけるインバランス料金回避など経済的メリット |
実証における各AI・人の役割
アクション | 主体 | 本実証における役割と概要 |
予測 | AI | 太陽光発電所の発電量実績、気象データ、設備情報などに基づき発電量を予測AIが予測します。エナリスが開発済で実運用しているシステムを活用します。 |
分析 | 生成AI | 予測AIが出した予測値と実績値について、分析生成AIが過去事例や関連データと照らし合わせて統合的に分析し、想定される原因の可能性を調査し具体的な対策案を生成・提案します。主にエナリスが開発します。 |
評価 | 生成AI | 分析生成AIが提案した内容(異常検知の根拠、原因分析の妥当性、提案内容の一貫性など)を、評価生成AIが過去データや整合性、ハルシネーションの可能性といった観点から多角的に評価します。主にKAGが開発します。 |
判断 | 人/専門家 | 評価生成AIによる評価結果や分析生成AIの思考プロセスを、スコアで分かりやすく可視化して確認します。その上で、状況判断、原因特定、対策指示を行います。人間のフィードバックはデータとして蓄積され、分析生成AIの継続的な精度向上に活用されます。 |
[1]アジャイル開発:1週間〜2週間などの短い期間で、機能ごとに設計・開発・テストを繰り返しながらソフトウェアを完成させていく開発手法。途中でスコープやユーザーニーズに変化が起きた場合でも開発の優先順位を柔軟に変更し対応できる。
[2]LLMOps(Large Language Model Operations):大規模言語モデル(LLM)を用いたアプリケーションの開発、運用、管理を効率化するためのプラクティスとワークフローの総称。データ準備、モデルの微調整、デプロイ、モニタリングなど、LLMのライフサイクル全体を円滑に進めるための体制、基盤、手法を指す。