“技術力のエナリス”が挑む、再エネ主力電源化の切り札「ローカルフレキシビリティ」
2025年12月25日エナリスは、知る人ぞ知る、先進的技術基盤を強みとする電力会社です。
そんな私たちが今、注力している研究の1つが「ローカルフレキシビリティ」です。
画期的!系統の川下で混雑を解消する「ローカルフレキシビリティ」のポテンシャル
ローカルフレキシビリティは、簡単に言うと、特定の地域における送配電網(以下、ローカル・配電系統)で、電力需給を調整する能力のことです。
第7次エネルギー基本計画が目指す「再生可能エネルギー(以下、再エネ)主力電源化」に向け、再エネは、全国的に、軒並み急増しています。
しかし、せっかく整備された再エネ発電設備が、出力抑制により発電できない事態が頻発していることをご存じですか(もったいない!)
出力抑制は「需給バランスの崩れ、系統混雑」を回避することを目的としたものです。「需給バランスの崩れ」は、再エネ等の発電量の増加によって需要に対し発電過多となり、バランスが崩れる事象です。「系統混雑」は、再エネ等を含めた発電により送配電網の容量の上限を超えるというものです。
日本の再エネ発電量の主力は太陽光発電で、2025年時点で4割以上を占めています。国内においては、住宅や工場の屋根、空き地等に導入されることが多く、2,000kW未満の小・中規模が圧倒的多数です。火力発電等の従来の発電所でつくられた電気は、「送電網」という高圧かつ長距離輸送のための送電線を通って変電所に送られ、変電所で電圧を下げた電気が、配電網を伝って消費者まで届けられています。
しかし、太陽光発電は消費者に近いところにあるため、送電網ではなく、配電網に接続されるという違いがあります。
また、太陽光発電は、大規模であればあるほど採算性が良くなる傾向にあるため、土地が確保しやすい過疎地域に設置される傾向にあります。しかし、過疎地域は、電力需要が少ないため、電線を通せる電力量が小さく設定されており、配電網に混雑が生じやすいのです。
そこで注目されているのが、ローカル・配電系統の混雑を緩和する「ローカルフレキシビリティ」というわけです。太陽光発電の出力抑制の回避に加え、将来的に必要となるであろう送配電設備の増強回避にもつながる可能性があります。
再エネ主力電源化の施策「日本版コネクト&マネージ2.0」
2024年7月、私たちは、北海道大学と共同で、蓄電池や電気自動車(EV)等の分散型リソース(DER)を活用したローカルフレキシビリティの研究を開始しました。
そして今年7月、私たちは、研究をさらに進めるために、東京電力パワーグリッド株式会社等10者と共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「電源の統合コスト低減に向けた電力システムの柔軟性確保・最適化のための技術開発事業(日本版コネクト&マネージ2.0)」に参画しました。
「日本版コネクト&マネージ2.0」は、欧米が導入している、“既存の送配電網を最大限に活用し、再エネを効率よく接続(コネクト)するために、混雑発生時の出力制御等にて送配電容量を管理(マネージ)する制度”も参考にして進めている新しい系統運用の取組みです。
私たちは、同事業の研究開発項目1「DER等を活用したフレキシビリティ技術開発」で、低圧リソース等のDERを制御するアグリゲーターとして、配電系統に設置されている多数の家庭用蓄電池、ハイブリッド給湯器等の低圧DERを系統混雑緩和に活用することを目指し、検証を行っています。
目視で確信を!泥臭く、地道にやっています/先端技術の実証フィールド
同事業では、自然豊かな栃木県那須塩原市内が実証フィールドとなっています。同エリアには、一級河川・那珂川水系箒川(ほうきがわ)に建設されたダムから送水される水力発電所(最大4,800kW)があるほか、近年は太陽光発電設備の導入も増加しており、ローカルフレキシビリティの効果検証にはうってつけのエリアです。
私たちは、同エリア内の住宅、携帯電話基地局等の複数拠点に、家庭用蓄電池やハイブリッド給湯器、エアコン等、さまざまな低圧DERを設置し、それらの機器をまとめて管理・制御することによって配電網の混雑緩和に活用する仕組みについて検討をはじめました。
同事業のフィールド実証は、自動制御かつ遠隔操作ですが、現地操作でしか調整・確認できない項目もあり、当社上席研究員の不破茂秀は、制御機器とDERの調整やその動作状況確認のために、現場に足しげく通っています。曰く、「条件変更時や重要な検証タイミングでは、現地調整を行い、調整どおりに確実に動作していることを目視含め確認します。給湯器やエアコン、蓄電池は複合制御となっており、給湯器沸き上げタイムラグ、エアコン温度制御による断続的変動等があり遠隔での電力変動把握だけでは実動作を誤認する場合もあるからです。特に、那須塩原のような再エネの導入が進んだエリアでの調整は、わずかな制御のズレにも細心の注意を払いたいのです。重要な検証では失敗は許されませんので、給湯器の沸き上げ開始、エアコンスイッチ点灯・送風開始を実際に体感し、ようやく成功を確信・安堵します」とのことです。これぞ、研究員の“さが”なのでしょう。同事業は2027年3月まで。いったい、あと何回、東京~那須塩原を往復することになるのでしょう。他にも、定期点検やメンテナンス、お部屋の掃除や害虫・落ち葉の除去等の現場作業があるそうで、意外にも、先端技術は、研究員の泥くさく、地道な作業に支えられているんですね。
私たちは、今日も、豊かな未来社会のために、「エネルギーだからできること」を考え続けます!




写真はすべて©ENERES
取材・文責 エナリス広報部







